てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

私たちは死や病をどうやって受容するのか?〜キューブラー・ロスの5段階説を読む〜

先月9月20日(月・祝)の第2の患者会すろーす主催で開催した読書会(オンライン)のレポートを、こちらでシェアしそびれていました。

 

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企画の発端については、こちらの記事をどうぞ。

matsukawaeri.hatenablog.com

 

2日前に予定されていたゆうあいセンターでの読書会が新型コロナウィルスの感染拡大の影響で中止されてしまったので、急遽オンラインのこちらに参加することにしてくださった方も‥‥‥。
合計10名の方がご参加くださいました。
 
キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間:死とその過程について』より、末期患者200名以上へのインタビュー結果として提示された、死や病を受容するまでの5段階説をスライドを使ってご紹介したあと、参加者のみなさんと感じたこと考えたことを語り合いました。
ロスは、否認と孤独、怒り、取り引き、抑鬱、受容という5段階を基本的な受容のプロセスとして提示したうえで、その全ての段階を通じて希望が存在すると述べています。
 
「自分も患者家族としてこうしたプロセスを経験した」という方、「患者と家族とでズレることもある」などなど参加者のみなさんの経験も交えながら‥‥‥
 
「諦めと受容のちがいは?」
「受容と希望の関係は両立するの?」
「段階ではなく複数の感情のせめぎ合う」というモジュール説を経由して、
「そもそも、受容ってなんだろう?」
「“死”をどのようなものとして捉えるかによって、受容のあり方も変わる?」
‥‥‥といった点について、考えをめぐらせる時間となりました。
 
もともと、家族のためのがんカフェや遺族のためのがんカフェで、「気持ちをどう整理するか?」という話題がでたとき、何人かの方が「ふりかえってみると、いろんな段階を経て受け入れられるようになった」とおっしゃるのを聞いて、今回の読書会を企画したのですが、複数の感情のせめぎ合いがあったり、家族とのズレがあったりということも含めてお話できて、すろーすの活動としても意義深い内容でした。
 
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。
 
 
今回は5段階と「希望」の章のみご紹介しましたが、改めてこの説が提示されている『死ぬ瞬間:〜死とその過程について』を読むと、実際の患者さんとのやりとりや背景にある社会的変化、医療のあり方、患者の家族など、他にも病や死に向き合ううえで考えるヒントになりそうなことがたくさんあって、驚きました。
機会があれば、1〜2章ずつじっくり読んで語り合うのもよいかもしれません。
 
気になった方は、ぜひ一度手の取ってみてください。

 

タイトルだけ見るとちょっとこわそうだけど、「死」は一瞬の出来事ではなく、それにどう向き合うかというプロセスとして体験される、そのプロセスに寄り添おうとするロスの誠意とあたたかさを感じられる一冊。

インタビューでの患者さんや家族とのやりとりの様子も、それぞれの人柄や人生観や関係性が垣間見えて、味わい深いですよ。