遅くなりましたが、先月のえほんやさん主催のえほん哲学カフェのふりかえりです。
今回の一冊は、前にも書いた『ジュリアンはマーメイド』。
事前のお申し込みがいつもより少なめだったのですが、自信をもって「参加しなかった人、もったいない!」と言える時間となりました。
参加したかったけれど参加できなかった方とは、ぜひまた一緒に読む機会をつくりたい!
以下、ネタバレあり。ご注意ください。
この絵本、トランス移行した友人との会話から生まれ、LGBTをテーマにした絵本に贈られるストーン・ウォール賞大賞を受賞しているそうなのですが、参加者からは「途中で、LGBT関連の本ってこと忘れてた」「あれ?どこがLGBTの本なんだろう?」という声がちらほら。
あれこれ話してみて、それが、この絵本の大きな魅力だな、と感じました。
「男の子なのにマーメイド?マーメイドって女の子じゃないの」という思い込みがあれば、ジェンダー関連の絵本のようにも読める。
けど、そういう思い込みなく読めば、観葉植物を引っこ抜いたり、勝手に人の口紅を使ったりする子どもの表現を、どう受け止めるかというようなお話にも読める。
ジェンダーバイアスがある人にとってもない人にとっても、あれこれ考えさせられる。
どちらの意味でも、おばあちゃんの存在やふるまいが、ヒントを与えてくれそうな、そんな絵本でした。
そのことに気づいたのは、前半、ジュリアンがマーメイドに憧れて、観葉植物やレースのカーテンや口紅で身を飾っているのをおばあちゃんに見つかったシーン。
「あっ」「あーあ」という声が、誰が何を思って発した声なのか。
一方は実際に発した声じゃなく心の声なのではないかという点も含めて、様々な推察が出てきたのがおもしろかった!
私は最初ジュリアンの声かと思って読んでいたけれど、「いたずらした子を見つけたときのおばあちゃんの声」説も子育てをしてる方ならではの説得力があったし、「二人同時に“あっ”ってなったんじゃないか」説も「そういう解釈があったか」と唸りました。
文字が少ないからこそ、こうした様々な解釈ができちゃうのかなぁ。
また、絵柄から、それぞれの登場人物について、
- この人はどんな人なんだろう?
- この絵が表しているのは、実際のその人?それとも、ジュリアンの視点からみたその人の印象?
と考える楽しさがあることにも、みなさんとの対話を通じて気づかされました。
絵も美しく、子どもが読んでもワクワクして楽しい。
想像力と創造力を掻き立てられる。
と同時に、子どもと接する大人のヒントにもなりそうな一冊でした。
子どもと接する機会のある人全てにオススメしたいくらい!
気になる方は、ぜひ手にとってみてください。
ジェンダー関連の絵本が気になる方は、こちらもどうぞ。