時を少し遡りまして‥‥‥
先月末10月31日(土)は、スロウな本屋さん主催のえほん哲学カフェ。
オンラインで『フォックスさんのにわ』をみなさんと読みました。
フォックスさんと犬は離れたことがない。いっしょに遊び、おやつを食べ、同じ音楽を楽しんで、冒険にも出かける。とりわけ好きなのは、いっしょに庭仕事をすること。でもある日、思いもしない悲しいことが起きて…。
フォックスさんは庭をめちゃくちゃにたたきこわしてしまった。豊かな土地はそれでも何かを育まずにはいない。喪失、再生、癒し、そして自然の力を描く、こころ打つ絵本。2019年コールデコット賞オナーブック(次点作)。
以下、ネタバレご容赦を‥‥‥
スロウな本屋さんがこの本をおすすめしてくださったのは夏前だったのですが、
カボチャが出てくる話だったので、あえてハロウィンまで待ちました。
ハロウィン生まれの私の「誕生日に楽しいことしたい」というなんとなくの気分でそうしたのですが、待って正解!
みなさんとの対話のなかで、「ああ、このシーンにはやっぱりカボチャが合う」というような理由を見つけることができました。
いつも一緒に庭のお手入れをしていた仲良しのいぬが亡くなってしまい、ささくれてしまったフォックスさんの心に、カボチャのトゲトゲした茎の似合うこと!
それから、参加者のある方の体験談、「うちにも、カボチャなんて植えた覚えがないのに勝手に生えてきた」が物語るカボチャの生命力。
お話をきくうちに、私も実家の庭に生えてきたカボチャのことを思い出しました。
触ると痛いほどの棘。
フォックスさんの心情とリンクした庭の植物が、架空のではなく実在する植物であるのがいいなぁ。
他にも、みなさんと読んでみて、思った以上に絵によって語られる部分の多いことに気づかされました。
転換期にあらわれる背景が白いページ。
なぜか空の色が薄い緑で描かれ、ちょっとずつ濃くなるところ。
最初は履いてなかったのに、なぜかあるときからブーツを履くようになったフォックスさん。
フォックスさんの心の状態を示すように1ページだけあらわれる抽象的なページ。
それから最後に言葉なしに語られる、新しい始まりを予感させるような結末。
そもそも、表紙の絵のフォックスさんは、悲しみの前のフォックスさん?悲しみのあとのフォックスさん?
などなど。
また対話の内容で意外だったのが、フォックスさんの回復過程のほうが話題になるかと思っていたのですが、その前の、フォックスさんが庭をめちゃくちゃにしてしまうシーンの話題から、何かをめちゃくちゃにしたくなる破壊的な衝動について盛り上がったこと。
ふだんは穏やかに過ごしてるけど、たまにヘヴィメタルを聴きたくなる、食器を割りたくなる。
そんな自分のなかに潜むデストロイヤーの存在‥‥‥。
悲しみからの回復は、悲しみを忘れて以前と全く同じに戻ることではない。
そうした存在を内面にひっそりと飼いながらも、また新たな日常を綴っていくことなのかもしれません。
スロウな本屋さんがおすすめしてくださる本は、自分で本棚を眺めるだけでは気づかなかったかもしれないけれど、こうして対話をしてみると意外な発見があり、参加者のある方がおっしゃってくださったように「バイブル」と呼びたくなるぐらい深く心に残るものばかり。
次回はどんな絵本にであるのか、楽しみです。