てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

哲学ウォーク〜アラン『幸福論』篇〜

12月13日(日)は、antenna Coffee Houseさんと、尾道で何度目かの哲学ウォークを開催。

哲学者の言葉が書かれたクジを一人一つひいて、その言葉に当てはまるスポットを探して歩きます。

 

これまでは色んな哲学者の言葉を用意することが多かったけれど、今回は、「アラン『幸福論』篇」と称して、全て1冊の本から引用。

 

 

わたしが読んだのは、抜粋版のこちらです。他に岩波版、角川版もあり。

アランの幸福論

アランの幸福論

  • 作者:アラン
  • 発売日: 2007/12/15
  • メディア: 単行本
 

 

寝付けない夜にたまたまkindle unlimitedで見つけて読んだんですが、哲学ウォークにぴったりな言葉がたくさんあって、この企画を思いつきました。

わたしのように本を読んだ人は、風景とともに本の内容を心に留めておけるし、本を読んだことのない人も、気軽に本の内容に触れることができる。

お得でしょ?

もちろん、参加したあとに「読んでみようかな?」という気になってくれたら、それもうれしい。

 

そして歩くルートも、今回は特別。

ふだんなら観光客でごった返していて絶対無理だけど、コロナの影響で観光客も参加者も少ない今なら‥‥‥ということで、出発地点のantenna Coffee Houseから坂道をのぼって千光寺公園へ、文学の道を通って頂上展望台まであがるルートを選択。

このルートで、いつかやってみたいと思ってたんです。

 

では、アランの言葉とともに、歩いた(登った)行程をふりかえってみましょう。

( )内は、アランの言葉と場所から参加者がつくったコンセプトです。

 

①「大げさに考えるのはやめて、ものごとをあるがままに見てみよう。」(あるがままに捉える)

f:id:e-matsu145:20201214232155j:image

 

②「現在に専念しなさい。刻一刻と前に進んでいる、自分の人生に専念しなさい。」(一期一会)

f:id:e-matsu145:20201214232216j:image

 

③「幸せの秘訣のひとつは、自分の不機嫌を気にとめないことだ。」(無責任)

f:id:e-matsu145:20201214232249j:image

 

④「困難にこそおもしろみがある。」 (体験)

f:id:e-matsu145:20201214232312j:image

 

⑤「想像力はなにもつくりだすことができない。なにかをつくりだすのは、行動である。」(なんとかできた)

f:id:e-matsu145:20201214232327j:image

 

⑥「この世の中は、自ら求めようとしない人には、なにも与えてくれない。」(行動する事の大切さ)

f:id:e-matsu145:20201214232343j:image

 

⑦「自分に優しくすること、自分の味方になることを、身につけなければならない。」(呼吸)

f:id:e-matsu145:20201214232355j:image

 

 

距離にするとたいしたことないけれど、高低差が激しいルートだったので、1時間半ほど歩いたら、もうへとへとです。

参加された方に「松川さん、これじゃ“哲学ウォーク”じゃなくて、“哲学ハイク”だよ!」と言われちゃいました。

たしかに!

途中、「登山か?」って言いたくなるようなとこもありましたもんね。

今度から高低差が激しいときは「哲学ハイク」ってイベント名にしようかしら(^_^;)

 

一息ついて(乱れた呼吸を整えて)、マスターに淹れてもらったドリンクをいただきつつ、スライドで上記の写真をみながら、それぞれが途中で他の参加者からもらった質問に答えていきます。

答えのなかには、アランの他の言葉を彷彿とさせるものも、ちらほら…。

この日歩いた行程のハードさとアランの言葉を重ね合わせる方も。

最後に感想を語りながら、「困難がおもしろいって本当?」「自分に優しくすること、自分を甘やかすことはちがうの?」などなど、アランの言葉に対するツッコミまくり。

おかげで、一人で読むだけだと鵜呑みにしがちだった箇所も、咀嚼し、もう一度自分なりに捉え直すことができた気がします。

 

もし再びあの道を歩くことがあれば、たちまち筋肉痛とともに、アランの言葉と、今回の対話を思いだせるでしょう。

(「あんなハードな道は2度と歩かない!」という方もいらっしゃるかもしれませんが。汗)

 

お付き合いくださった参加者のみなさん、antenna Coffee Houseさん、ありがとうございました。

 

 

なかには、今回、コロナ感染状況や距離や様々な事情を考慮して参加を断念せざるをえなかった方も‥‥‥。

ルートや哲学者の言葉は変わるかもしれませんが、また企画しますので、落ち着いたらぜひ!

岡山市のパートナーシップ制度〜パブコメのおかげ?だったらいいな〜

みなさん、パブリックコメントって、書いたことありますか?

 

パブリックコメント、通称「パブコメ」とは、公的な機関が規則などを制定しようとする際に、広く意見や情報、改善案を求める手続きのことだそうです。

 

実はわたし、ヨノナカ実習室のスミさんからのお誘いで、書いたことがあるんです。

春に、ちょうど以前から関心のあったパートナーシップ制度に関するパブリックコメントを在住地である岡山市で募集していたので、スミさんと連名で作成し提出しました。

 

詳しくは、ヨノナカ実習室のブログをどうぞ。

yononaka-jsh.hatenablog.com

 

yononaka-jsh.hatenablog.com

 

 

自治体のパートナーシップ制度の内容を調べあげ、実現可能な提案をできるよう、がんばりました。

 

しかし、その後岡山市が公表した回答は、正直なところ「それってちゃんと答えになってる?」「ちゃんと検討してくれた?」と疑いたくなる部分もあり、がっかりして、こちらのブログではそのことに触れる気になれずにいました。

 

が、先日、一緒に作成したスミさんからうれしい情報が。

私たちがパブリックコメントで提案していた、市営住宅の入居申込や同居申請、市営墓地の使用承継、保育施設等の利用申込などが、パートナーシップ宣誓書受領証の提示で可能となるそうです!

 

www.city.okayama.jp

 

 

私は現在は結婚していますが、3年ほど事実婚状態の時期があり、そのときは法的にパートナーとの関係が保証されていないことに不安を感じることもありました。

(ふたりとも元気なら互いの意思表明だけでなんとかなることも多いですが、もし一方が意識不明なんてことになったら、ふたりの関係を証明するものがないので。)

 

そのため、同性パートナーのいる方も本人たちが望めば結婚できるようになればいいのに、と思っています。

しかし、同性結婚が法的に認められるのはまだ先になりそうなので、それまでのつなぎとして、せめてパートナーシップ制度だけでもという思いがありました。

 

せっかくのパートナーシップ制度があっても、使えない制度なら意味がないので、市がちゃんと効力のあるものにしようとする姿勢をみせてくれてよかったです。

 

これがパブコメを出したおかげかどうかはわからないけれど、「パブコメなんか出しても無駄でしょ」というトラウマは避けられそうなのも、ほっとしました。

 

パブコメに関心のある方は、ヨノナカ実習室で「はじめてのパブリックコメント」という講座があるので、そちらもチェックしてみてください。

 

yononaka-jsh.hatenablog.com

哲学的思考が、だれの前で、だれにたいしてなされるものか〜臨床哲学における《メタ》

昨日、コロナウィルス感染拡大の影響で対応を迫られることが、それぞれの対話活動を、何のために、どういう場所で、どういう方を対象に行うのかを確認する機会にもなっているいるという記事を書きました。

 

matsukawaeri.hatenablog.com

 

今日、たまたま開いた本ほたまたま開いたページに、ぴったりの言葉がありました。

 

ここでわたしたちが考えてみなければならないのは、しばしば指摘されるような哲学の失力は、哲学的思考が、だれの前で、だれに対してなされるものかという問いを、じぶんに向かって立てなくなったことに起因するのではないかということだ。哲学を、《反省》という、他者が不在の場所ではなく、他者との関係という場に置き直してみることだ。

 (鷲田清一『「聴く」ことの力』p.29)

 

“哲学はどこまでも《メタ》という次元を含む。

なにものかへの問いは、その問いそのものへの問いを自己言及的に含んでいなければならない。 

鷲田清一『「聴く」ことの力』p.29)

 

それへの問いが哲学の中枢神経なのだ。その問題を問わないで、いきなり街に出るのはグロテスクである。

 (鷲田清一『「聴く」ことの力』p.29)

 

 

引用元は、こちら。私の哲学バイブル(のうちのひとつ)です。

「聴く」ことの力

「聴く」ことの力