てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

思考の交差点を探そう!〜牢屋のなかでも自由でいられる?〜

9月4日、またまた徳島県立池田高校へ。

今度は、探究科の1年生が対象。

もともと6月末に企画していたのが、大雨の影響で延期になって、ようやく実現。

 

1年生だしお互いを知るために、先日2年生対象に実施した「相手の考えを理解する質問」をしようかとも考えたのですが、私自身の自己紹介もしないといけないし、ワークの説明が短いほうがいいなと、「牢屋のなかでも自由でいられる?」をお題に思考の交差点を探すワークを実施。

 

こちらのセミナー時に開発したワークです。

matsukawaeri.hatenablog.com

 

くじびきで3人1組になってもらい、それぞれの考えの共通点と相違点を探すワークなのですが、昨年12月に2年生を対象に実施した際、3人1組だと煮詰まってしまうグループもあることがわかりました。

たしかに、少人数って話しやすいけど、一人一人の負担は大きいもんね。

そこで、今回は途中からもう1組と合体し、2組6名で協力しあう体制に。

さらに、校長先生に助っ人に入ってもらう場面も。

前半、苦戦していたグループも、後半かなりがんばってました。

 

 

それでもやっぱり、何をしているのか、なぜこれを楽しそうにやってる人がいるのか、まだピンときてない人もいるかもしれません。

みんなで話して聞いて考えるって、どういうことか。

なにも説明しなくてもすでに知ってる人もいるし、少しの説明で伝わる人もいるし、他の人たちがやってるのをみてそういうことかと理解する人もいるし、試行錯誤やりながら少しずつ学んでいく人もいる。

これは学校だからとか、まだ高校1年生だからとかではなく、街中の哲学カフェでも、大学の哲学科でも、どこでもそう。

 

幸い、今年は助成金の力もお借りして、ある程度継続的に哲学対話を実施する機会をいただけそうなので、(コロナの影響で学校行事があまりできないこともあって、レクレーション的な意味でも期待してくださってるそうです、ゆっくりじっくり、クラスのなかに対話をとおした探究の文化を耕していけるといいなと思ってます。

 

まだ、何をどういう順番でやっていくか、これまで単発で実施してきた企画をどう連続したプログラムとして組んでいくのか、迷ってるので、近々落ち着いてこれまでの池田高校での取り組みをふりかえり、考えないと!

2つの文章を読んで対話する@徳島県立池田高校

準備→対話→ふりかえり→準備→対話→ふりかえり‥‥‥というサイクルで暮らしたいのだが、何故それがこんなに難しいのか。

以下、8月17日〜18日のふりかえりです。*1

 

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またまた徳島県立池田高校へ。

前回は2年生の探究科が対象でしたが、今回は3年生の希望者が対象。

小論文やグループディスカッションなど受験対策も兼ねて、2つの文章を読んで問いをつくり、対話する。

「ふりかえり作文」希望者は、ふりかえりも。

 

2017年から毎夏、同じようなことをやってるのですが、グループ分けの仕方や時間配分は、人数や参加する生徒さんたちの個性に合わせて臨機応変にアレンジ。

今年は、全員で25人ぐらいだったかな?

最初に私の右隣の人から1人おきで文章①を読んだ疑問や感想を。

次にさきほど「1人おき」でとばされた人たちが文章②を読んだ疑問や感想を。

それらの疑問や感想をヒントに、1〜3月生まれ、4〜6月生まれ、7〜9月生まれ、10〜12月生まれとグループ分けして問いを出してもらったら、人数も個性もまちまちながら、どのグループも予想以上に楽しそう♪

もう一度全員で輪になろうかと思っていたところを予定変更し、そのままのグループで、問い選びと2日目の対話を堪能してもらいました。

 

こういう対話って、参加者が各々の個性と思考力を発揮できるかどうかで内容の濃さも楽しさも変わってくるので、こういう臨機応変な対応ができるかどうかって本当に大事。

過去には同じプログラムをグループ分けせず、めちゃくちゃ対照的な2人の議論に他のみんなが便乗するかたちで進めた年もあれば、友だち同士でグループをつくって対話したあとに全体で‥‥‥って年もありました。

けど、今年はこれがベストだったようです。

 

また、2日目から参加の生徒さんや先生もいたので、各グループに「新メンバー」として加入してもらうことに。

新メンバーに問いがどうやって出てきたり選ばれたのかを説明してもらうことによって、1日目から参加してるメンバーにとってもふりかえりの効果が。

 

こういうのって、細かいタイムスケジュールを求められると難しいんでうしょね。

先生方が信頼して任せてくださるからこそ、こちらも臨機応変に対応できる。

 

いまここにいる人と状況を活かしてこその対話、ということを改めて感じた2日間でした。

 

 

*1:書きかけで膀胱炎になってしまい、下書き状態で保存されていました。その後、膀胱炎は無事完治しました。

さざなみ 歩く学校 第1回「社会で揺らめく人の感情」

昨日は、長島へ。

喫茶さざなみハウスで、「さざなみ 歩く学校」の第1回。

「社会で揺らめく人の感情」というタイトルで、長島愛生園入所者自治会長の中尾伸治さん、長島愛生園歴史館学芸員の田村朋久さん、さざなみ店主の鑓屋さんと対話してきました。

 

さざなみ 歩く学校 第1回「社会で揺らめく人の感情」 | さざなみハウス

 

 

以前からヒバリ照ラスや宝湯で一緒に哲学カフェを開催してきた鑓屋さんと、「春頃に長島をぶらぶら歩く企画をやりたいね」と話していたのですが、新型コロナウィルスの影響でお流れに。

それはそれでそのうち実現するつもりなんですが、いまはそれ以上に、新型コロナウィルスで揺れる社会や自分の気持ちに向き合いたい。

ハンセン病に感染された方が家族と引き離され、(中尾さんの言葉をお借りすると)「閉じ込められ」てきた長島という場所で、ハンセン病を生きてきた中尾さんと、その歴史をわかりやすく教えてくださる田村さんと、一緒に考えてみたいということで実現しました。

 

当日配信もされてYoutubeで観れるので、ここでシェアしておきますね。


8/29 sat. さざなみ歩く学校「社会で揺らめく人の感情」

 

 

以下、わたしなりのざくっとしたふりかえり+感想です。

 

中尾さん、田村さんにハンセン病と新型コロナウィルスの共通点と違いをうかがうと‥‥‥

感染症という共通点はあれど、感染から発症までの期間や病が外見から見えるか見えないかなどなど、病の特徴は全然ちがう。

情報伝達のあり方や国家政策のあり方もずいぶん変わった。

ハンセン病を生きてきた中尾さんからみると、今の私たちの状況は、ハンセン病のときよりずっと栄養も医療も行き渡っている状態。

田村さんのおっしゃるとおり、情報も様々な仕方であるし、ハンセン病に対する差別や偏見を反省してつくられた人権を守るための感染症法もある。

「隔離」といっても国が強制的に生涯にわたって「閉じ込め」ようとしているわけじゃない。*1

「治るだろうか」という不安や恐れはあれど、治れば出られることがわかっている、あくまで療養と感染予防のための一時的な隔離にすぎない。

 

にもかかわらず、なぜ同じような差別や排除が起こってしまっているのか?

そのもどかしさを、すごくすごく大事にしたいと思いました。

 

後半は、来場者の方の「隔離」に関するコメントから、①感染予防のための隔離と、②人々を閉じ込め社会的に分断して隔離と、③法や制度をすり抜け人々の内面に巣食う精神的な隔離のちがいや、感染症だけでなく、様々な障害者と健常者を分けてしまう社会的分断についても考える展開となりました。

 

ハンセン病については、いまでは差別として認められている閉じ込め政策を根拠に「隔離してるということは、隔離するだけの理由があるんでしょ」と言う人もいたそうです。

ハンセン病も今では治療可能な病気で、長島に暮らしている方達も、かつては治療不可能な時代があり、なんらかの予防的な隔離が必要だったというのは確かかもしれない。

けど、正体不明の病への恐れからなされた言動を不用意に信じることの危うさと、そこから生まれる分断の恐ろしさを、改めて感じました。

 

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喫茶さざなみハウスからの風景

 

後でうかがったのですが、この美しい景色を、「全く美しいと思えない。グレーの海にしか見えない」とおっしゃる入所者の方もいるそうです。

そんなふうにしか見えないようにさせてしまった歴史を改めて重く受け止めなければと思いました。

 

長島愛生園、強制的にではなく自主的に訪れる分にはとても美しい心地よい島なんです。

そして歴史館には、重い差別や排除の歴史とともに、そんな困難な状況のなかで生きてきた人たちの強さを感じる作品も。

わたしにとって長島は、差別の重さとともに希望を感じさせてくれる場所でもあります。

訪れるたびに、生きるとはどういうことか、を考えさせられます。

いまは居住地域への立ち入りはできませんが、すぐには難しい方もたくさんいらっしゃるでしょうが、もし機会があれば、ぜひ訪れてみてください。

(わたしも、また行きます。)

 

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喫茶さざなみハウスの「さざなみソーダ 朝焼け」(他に夕焼けもあります)

 

 

www.mhlw.go.jp

 

 

わたしが初めて長島愛生園を訪れたときの感想はこちら↓↓

matsukawaeri.hatenablog.com

 

*1:これは以前田村さんに歴史館で教えていただいたことですが、かつて長島に閉じ込められたハンセン病の人たちは、脱出できないようにとお金も没収されたりしたそうです。島内には脱出者を罰する監獄跡もあります。