てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

ライプニッツ係数と世界の調和

ライプニッツといえば、わたしにとっては「モナド」と「可能世界」の人なんですが、夫(弁護士)にとっては、損害賠償請求計算の人らしい。

 

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法曹界でいうところの「赤い本」(『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故センター東京支部編)より

 

 

ライプニッツ係数というのがこちら。

ja.wikipedia.org

 

 

まぁ、簡単にいうと、交通事故などで障害を負った場合に、長期的にかかる介護やなんかの分の賠償金を一度にもらって、いま使わない分を銀行に預けておいたりすると、利子が発生しますよね。

それってちゃんとその都度介護費用を払えば生じないはずのお金なので、その利子分は賠償金から先に引いておきますね、っていう計算らしい。

いや、まぁ、よう知らんけど。*1

とにかく法曹界では、現在も現役バリバリに紛争解決に役立ってる計算方法だそうです。

 

で、その計算方法を考案したのが、「モナド」だとか「可能世界」だとか言ったライプニッツと同一人物であると。


実は、わたしは学生の頃から、ライプニッツの、私たちが生きるこの世界の他にも様々な世界が存在しうるという「可能世界」論が大好きなんです。

が、その一方で、その「可能世界」を神と結びつけ、現実に創られた「この世界が全ての可能世界のなかで最善のものである」と述べたことに不満も抱いておりました。*2

結局、神かよ! わたしは、この世界が最善だとは思えない!と。

 

でも、ライプニッツよ、いろんな世界がありうるけれどこの現実世界が最も調和してるはず、そうすることができるはずだと、神を信じるだけじゃなく自ら努力してたのね〜。

見直したわ。

 

このGWに夫の隣で仕事しているときに、実際にライプニッツ係数が使われている現場を初めてみることができましたが、実はこのライプニッツ係数のことを教えてもらったのは何年も前のこと。

 

夫「交通事故でライプニッツ係数っていうのを使うんやけどさぁ‥‥‥」

私「え、ライプニッツって、あのライプニッツ?」

夫「え? なんで、ライプニッツのこと知ってるん?」

私「いやいや、ライプニッツは哲学者やから!学生のときから知ってるよ〜」

 

と、まるで共通の知り合いを見つけたときのような驚きと感動。

その後もときおり会話のネタとなって、われわれ夫婦の調和に貢献してくれているのです。

 

 

【おまけ】

法曹界での「ライプニッツ、赤い本」といえば、『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部編)だそうですが、わたしにとって「ライプニッツ、赤い本」といえば、こちら。

モナドロジー・形而上学叙説 (中公クラシックス)
 

 

*1:関西弁で「確かな情報ではないので、間違ってても許してね」という意味の言葉です。あくまで素人説明なので、間違ってたらごめんなさい。

*2:わたしが哲学ウォークで時々使う、「我々は考えうるなかで最もよい世界に生きている」というライプニッツの言葉も、この思想からきています。

facebookで哲学ウォーク〜参加者の感想+コンセプトはどこいった?〜

5月2日に開催したfacebookで哲学ウォーク、参加者の方がその日のうちに感想をご自身のブログにアップしてくださいました。
京都でナラティブ・カフェを開いてらっしゃる、Lotusさんの感想です。

 

life.sensuallotus.com

 

送られてきた言葉にぴったりな場所を探して歩く様子、

なんとなく頭にあった案もあるけれど「しっくりこないな」とやめたり、

諦めかけてふと覗いたそこで「これだ」というものに出会ったり‥‥‥。

そういう哲学ウォークならでは逡巡や、徐々に自分の選択の奥にある思考が紐解かれていく様子が伝わってきます。

 

特に、この「しっくりこないな」という感じを、わたしはとても大切にしていて、うれしくなりました。

わたしたちのなかには、自分でも自覚していない思考がまだたくさん眠っている。

哲学とは、それを宝探しのように発掘していく作業だ。

わたしはこう考えているのですが、「しっくりくる/こない」というのは、その発掘の重要なヒントになります。

それが、目の前の景色や他の人からの質問をヒントに少しずつ掘り起こされ、明らかにされていくのが、哲学ウォークのおもしろさなんじゃないか。

そう思ってます。

 

 

ところで、最後のほうで彼女が指摘してくださったように、ピーター・ハーテローさんのオリジナル版では、場所とともに「コンセプト」をつくることになっています。

「コンセプトをつくる(conseptualize/概念化する)」という作業は、哲学的営みにおける重要な基礎能力のひとつです。

が、今回の《facebookで哲学ウォーク》では思い切ってこの「コンセプトをつくる」という作業を省くことにしました。

 

省いた理由は、「コンセプト」というものがどういうものか、全員に伝えられる自信がなかったから。

実際、オリジナル版の哲学ウォークを実践していても、しばしばこの「コンセプト」というのがどういうものか戸惑う方がおられます。

対面だと相手の様子をみながら説明を補足したり、コンセプトづくりをさりげなくフォローすることも可能なのですが、投稿スタイルだと難しい。

もちろん、わたしが説明下手なだけで、説明のうまい人ならなんの問題なくできるのかもしれません。

が、説明があまり多くなると参加のハードルがあがるし、なるべくいろんな人に楽しんでもらいたいというここともあり、シンプルな形にまとめることにしました。

 

その代わり、その場所を選んだ理由がきちんと文章化されるので、質問される方もそれをヒントに質問を考えられるのではと思います。

(一方で、オリジナル版の哲学ウォークでは、理由を繰り返しきくことができないので、コンセプトがないほうが難しいかもしれません。)

 

この感想を寄せてくださった、Lotusさんのように、最後に「今回のわたしのコンセプトはこれかな?」なんてふりかえると、さらに充実したワークとなるかもしれませんね。

 

 

もうひとつ、Lotusさんがおっしゃっている、こうした哲学実践とナラティブ・アプローチとの親和性や相違点については、今回の哲学ウォークだけじゃなく、他の哲学実践も含めて、今後じっくり考えてみたいなぁ。

 

 

facebookで哲学ウォーク

昨日、facebook上で開催した哲学ウォーク、無事終了しました。

 

www.facebook.com

 

イベントページを掲示板のように活用した、投稿スタイルのイベント。

イベントページの「情報」タブからプログラム内容を読んでから、「ディスカッション」タブを開いてください。

過去の投稿から遡ってみていただくと、みなさんの思索の足跡を‥‥‥というか、イベントの様子をほぼそのままご覧いただけます。

 

最終的に、26名の方が参加してくださいました。

このワークを思いついたときから、このアレンジ版は、オリジナル版では難しいぐらい大人数のほうが面白いだろうなと思っていました。

前夜、哲学者の言葉を送る作業では「大判振る舞いしすぎたか?」と一瞬後悔しかけましたが、今年はカフェフィロ15周年だし!自粛お見舞い企画だし!とがんばりました。

結果、各地のいろんな景色が集まって、楽しかったです。

今後もこの人数で実施するかどうかはわかりませんが(体力次第)、今回この人数でやってみて、改めてわかったこともちらほら。

ありがとうございました。

 

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前日がんばってつくったクジ

 

以下、ちょこっと反省点。

 

反省1)写真は自分で

写真はネットから拾ってくるのではなく、自分で撮ってね」とはっきり明言しておくべきでした。

幸い、今回の参加者は丁寧に事前に「ネットの写真でもいいですか?」ってきいてくれたけど、ちゃんと説明しておかないと、ネットでもいいだろうとご自身で判断する人もいそう。

というか、最初にこのワークを思いついたときは、むしろネットで写真を拾ってくるほうメインで思いついたんです。

他の地域で散歩できる状況かどうかわからなかったので。

しかし、「自粛生活で孤立しがちな日々に窓を開けるような哲学を」と思って、他の人の暮らしを垣間見る機会を提供する「自分で近所や自宅を歩いて写真を撮る」方向に。

あと、わたし自身、散歩する言い訳が欲しかったので。

実際、そのほうが頭や体の筋トレにもなるし、みなさんの様子が垣間見れてほっとしたし、自分で撮ってもらうことにしてよかったと思います。

 

反省2)合間の時間

7:00-13:00 投稿タイム

13:00-15:00 質問タイム

15:00-22:00 回答タイム

‥‥‥というように時間を区切りましたが、人数が多い場合は、各ステップのあいだにバッファとなる時間を設けたほうがよさそう。

各ステップの終了間際に投稿やコメントされる方が複数いたり、投稿ボタンを押してから反映されるまでに若干のタイムラグが生じることもあります。

ちゃんとそれらが完了してるか見届けてから次のステップに移ったほうが、参加者も安心だし、進行役もやりやすいだろうと思いました。

なので、次にやるときは、ちょっと時間設定をいじろうと思います。

でも、投稿タイムは、朝の散歩や通勤時間とランチタイムも入るようにしたいから、変えずにこのままいこう。

 

ほかにも、参加者の方の感想をいただいたり、オンラインの哲学ウォークとのちがいや共通点についての発見があったり‥‥‥。

長くなるので、それらについては、また改めて。