てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

人権の手前にある対話のススメ@烏城高校

一昨日は、烏城高校の教員研修にお招きいただきました。

 

www.ujo.okayama-c.ed.jp

 

スロウな本屋さんで烏城高校のとある先生とご縁ができたことがきっかけで、今回のご依頼につながりました。

障害学習センターと同じ敷地になる定時制高校で、昼間部と夜間部があるんですが、そのあいだに昼夜間共通の授業があったりして、これは

「子どももいろんな子がいるんだから、学校もいろんな学校があったほうがいい」

を実現しちゃってる学校なのでは?と以前から気になっていたので、お話をいただいたときからうかがうのを楽しみにしていました。

 

研修前半は、自己紹介も兼ねて、これまでの活動から烏城高校の参考になりそうな活動*1をご紹介しながら、哲学対話の特徴や可能性、対話実践のポイントや心がけていることなどをお話させていただきました。

人権教育研修ということで、人権に関わりそうなポイントもちょこっと添えて。

 

烏城高校人権教育研修のスライドより©︎松川えり

烏城高校人権教育研修のスライドより©︎松川えり

 

後半は、実際に体験してみましょうということで思考の交差点を探すワークを実践。

短時間で自分と異なる考え方をきく楽しさを味わってもらいたいと、このワークを選びました。

短い時間だったにも関わらず、お互いの考えが交わったり分岐したりする共通点や相違点がたくさん発見されました。

あちこちで様々な人とこのワークをしてきましたが、こんなに短時間でたくさんの共通点や相違点が掘り起こされたのは初めで、こちらがびっくり。

 

終了後の雑談で、

「相違点を探そうとすると、いつもより細かく話をきけますね」

「やっぱり!というところもありつつ、思わぬところで予想とちがう考えが出てきて、驚きました」

といった感想をいただきました。

 

ワークの様子や質疑応答でのやりとり*2から、普段から先生方のコミュニケーションが活発なことがうかがえ、ここに哲学の〈ともに考える〉という要素が加わるとどんな可能性が広がるのか、ワクワクしました。

 

池田高校のように生徒さんと対話するのも大好きだけど、こうして先生方を対象にやるのもいいなぁ。

対話のなかでどんなことが起こっているのかは、実際に体験してみないとわからないことが多いし、同じ職場の先生みんなで体験することによって、職場でコミュニケーションに関する課題が出てきたときに問題を共有しやすくなるのでは、と思いました。

 

ひとりひとりの生徒さんをしっかりみようとする学校のようなので、普段の生徒さんとの会話や先生同士のコミュニケーションでも、対話づくりのポイントを活かせる機会がたくさんありそうです。

 

わたし自身も先生方ともっとお話してみたくなっちゃったし、烏城高校にもますます興味が湧いたので、今後もこのご縁が続くといいな。

*1:事前の打ち合わせでご要望いただいたので、学校での対話実践だけでなく、生きる力につながりそうな対話実践や絵本やアートをつかった対話実践についてもご紹介させていただきました。

*2:ある先生とのやりとりのなかで「思い通りにいかないとイライラしてしまうのはなんでだろう?」という疑問がでてきて、2晩たった今も気になっています。また機会があれば、烏城高校の先生方と一緒にじっくり考えてみたい!

『ひばりに』@えほんやさん

先月末にえほんやさん主催で開かれたえほん哲学カフェの備忘録を残しておこう。

えほんやさんが選んでくださった『ひばりに』を取り上げました。

 

tenkiame.com

 

ehonyasan.shop-pro.jp

 

以下、ネタバレご容赦を。

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こどものための哲学教室『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』

今日は、さんかく岡山(岡山市男女共同参画社会推進センター)主催、こどものための哲学教室を開催。

小学1〜3年生の子10名と、『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』を読みました。

 

 

先月末のテツトークで『差別の哲学入門』の池田喬さんと、「この絵本、いいですよね」と盛りがってたやつです。

 

読み終わったあと、実話が元になっていることを伝えると、「え!ほんとにあったことなん!?」と驚きの声があがりました。

よっしゃ、つかみはOKだ。

 

やっぱり絵本の力は偉大だなぁ。

 

最初の自己紹介では、シャイだった子、声が小さかった子、「えー、よんでほしい名前とか特にない」なんてやる気なさそうに言ってた子もいましたが、少しずつ「はい」「はいはい」と発言権を求める声があがり、中盤からは、ほとんどの子が「はいはいはいはい!」と声をあげ、ほぼ常にだれかの手が上がってる状態に。

 

とくに今回大盛り上がりのきっかけになったのが、ズボンを履いて投稿するメアリーに対し、学校の前で反対する人たちが描かれたページ。

「女の子はドレスをきるべき!」

「ズボンなんてとんでもない」

「ドレスはステキ」

なんて看板を掲げる姿に‥‥‥

 

「自分はドレスを着たことがない男の人が、『ドレスを着るべき』なんておかしい」

「ズボンをはいたことのない女の人が、ズボンよりドレスのほうがステキだなんて、どうしてわかるの?」

「女の子はズボンをはいちゃいけないって、誰が決めたの?」

 

ツッコミをいれまくったと、みんなのギモンを紙に書いてもらって確認。

なかでも複数の子が挙げた、以下のポイントが印象に残りました。

  • 着たことがないのに問題(着たことがなければ、男の人はドレスがきついこと知らないし、女の人もズボンがステキってこともわからないのでは?)
  • 誰が決めたの?問題(女の子はズボンをはいちゃいけないって決めたのは、男の人?そもそも、決めた人はいない?)
  • 味方問題(女の人も女の人の味方をしてくれないのはなぜ?女の人も男の人の味方?お父さんはメアリーの味方だと思うのはなぜ?)

3つ目の味方問題については、指摘してくれた子たちのあいだでも、共通するポイントと人によって考えが異なるポイントがありそう。

これは、今後も考え続けたい問題だなぁ。

 

あと、今日は掘り下げ損ねてしまったけれど、最後のほうに、話すのをパスする子に対して「話すべきだ」という意見が出たシーン、わたしのなかでこんなギモンも浮かんじゃいました。

  • 「ドレスを着なさい」と押しつけるのと、「発言しなさい」と押しつけるのは、同じ?ちがう?

もしまた同じメンバーで話す機会があったら、みんなの意見がきいてみたい!

 

 

みんなから刺激を受けて、わたしのなかでもたくさんギモンと発見が湧いてくる時間でした。

参加してくれたみなさん、申し込んでくださった保護者のみなさん、さんかく岡山のみなさん、ありがとうございました。

 

 

ちなみに、同じ絵本を取り上げた大人向けのえほん哲学カフェはこんな感じでした。

同じ絵本で話しても、対話の内容はけっこうちがう!

matsukawaeri.hatenablog.com

 

 

「この絵本、いいよね」と盛り上がった、池田喬さんたちの本はこちら。

今年勝手に宣伝したい本トップ3に入りそう。

 

 

【追記】

公開後に、こんな記事見つけちゃった。

 

【腑に落ちない】パンツスーツで臨んだ面接。「せっかく女性なんだからスカートで…」面接官が放った言葉にモヤっと

https://trilltrill.jp/articles/2768172

 

まだ「むかし」になりきってなかったかー(>_<)