本日は、スロウな本屋さんのえほん哲学カフェにて、前にご紹介した『みんなたいぽ』を読みました。
以下、めっちゃネタバレしてますので、ご注意ください。
パンをぬすんだ。ひとをぶんなぐった。ひどいことばで傷つけた。
わるいことをする人を逮捕し「ろうやで反省しなさい」と言うおまわりさん。
‥‥‥ここまでは、わかる。
けど、途中からちょっとおかしな展開が‥‥‥。
逮捕された人が訴えます。
「言葉で傷ついたから、言葉を逮捕してください」
「色で傷ついたから、色を逮捕してください」
「たしかに」といって、言葉や色や音を逮捕していくおまわりさん。
すると‥‥‥
そんな不思議な絵本に、参加者から様々なモヤモヤが湧いてきます。
- なぜタイトルが「たいほ」ではなく「たいぽ」なのか?
- 最後の球体はなんなのか?
- 理不尽なのに明るい気持ちになるのはなぜなのか?
- 言葉や色や音を逮捕することはできる?
- 言葉と声のちがいは?
さまざまな疑問とモヤモヤがわいてきます。
あと、何人か事前にお子さんと読んだという方がいらっしゃったのですが、「子どもと爆笑しながら読んだ」という人と「子どもが、わけわかんないって怒っちゃった」という人、「つまんないって言われちゃった」と、子どもたちの反応が大きく分かれたのも興味深く。
こうしたさまざまな切り口からみなさんと語り合うなかで、気づかされました。
この絵本のなかで描かれる理不尽やナンセンスは、一見、荒唐無稽なフィクションのようだけど、私たちが生きる現実の世界の理不尽さやナンセンスを映し出している側面もあるのだ、と。
パンを盗むのはたしかに悪いことだけど、仕事が見つからないのはその人のせいなの?
仕返しをするのはたしかに悪いことかもしれないけれど、傷つけられても我慢しなきゃいけないの?
言葉が人を傷つけるからって、言葉狩りみたいになっちゃっていいの?
色で差別するのがいけないからって、色が存在しないかのようにふるまっていいの?
音が迷惑だからって、あの音もこの音も消しちゃっていいの?
言葉や色や音を逮捕するなんて、ナンセンスだ。
けど、その一方で、実際に、言葉や色や音を取り締まるようなことが行われていたりもする。
だからこの絵本を読むと、理不尽やナンセンスさを突きつけられて、モヤモヤしたり怒りたくなったりする人がいる。
と同時に、現実にある理不尽さを、ナンセンスなやり方でぶったぎってくれているところに爽快さを感じる人もいる。
そうした気づきと「たいぽ」の皮肉めいた響きや、「球体は閉じていると同時に開かれている」といった指摘とが相まって、私たちがクラスこの世界の在り方と捉え方、関わり方について考えさせられる不思議で豊かな時間でした。
ひとりで読んでるだけだったら、この絵本で描かれていることと現実の世界をここまで繋ぎ合わせて考えることはできなかった気がします。
ご参加くださったみなさん、スロウな本屋さん、ありがとうございました。