てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

「同意するってどういうこと?」さんかく岡山×岡山大学

3月20日(土)の午前中は、“さんかく岡山”さんこと、岡山市男女共同参画社会推進センターの主催で、オンライン哲学カフェでした。

 

密かにずっと「これで哲学カフェやりたい!」という想いをあたためていた、こちらの動画をテーマ代わりに。

 


Consent – it’s simple as tea(日本語版)

 

性暴力防止のために、性的同意について紅茶にたとえて説明する動画です。

さんかく岡山さんの「若い人にも参加してほしい」というご期待と、「同意っていえばインフォームドコンセントにも関係あるよね」という発想から、医療者のための哲学カフェを一緒にやってる岡山大学の小比賀美香子先生にご相談させていただき、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の総合内科学さんにも共催をお願いすることに。

 

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性的同意や手術の同意以外にも、アルコールを、本を貸すこと、などを身近な体験を参照しながら‥‥‥

  • 断られるとしんどく感じちゃうのはなぜ?
  • 「喜ばなくっちゃ悪いな」と思うのはなぜ?
  • 欲しいと言われるまえにするのは押し付け?
  • 夜の紅茶(性的同意)と紅茶は本当に同じ?
  • 同意と合意は同じ?ちがう?
  • 同意と妥協、交渉の関係は?
  • なんのための同意?→同意のサインは、気持ちを大事にすることとは別?→他人の気持ちがわかるってどういうこと?

などなど「同意」をめぐる対話が繰り広げられました。

 

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2021.3.20「同意するってどういうこと?」松川メモ

 

なかでも最も盛り上がったポイントを1つあげるとしたら、同意をYES/NOの2択で捉えることの危うさでしょう。

NOと言われると完全に拒絶されたようでしんどいけれど、実際には、100%YESという気分じゃなくても、その相手と関わること自体は嫌じゃないことも。

また、相手がYESと言ったからといって、100%なんでもしてOKとも限らない。

実際には、0〜100まで様々なグラデーションがある。

グラデーションの認識も人によって異なるから、コミュニケーションを通して「関係性のなかでグラデーションを育てていく」という視点が大事なのでは、という指摘に、多くの方がうなづきました。

 

また、実際にこの動画でやってみてよかったな〜と思ったのが、“紅茶にたとえてみる”という発想を共有してるおかげで、公の場でどう話すか迷う性的な事柄についても話しやすかったこと。

「昼の紅茶は〜だけど、夜の紅茶は‥‥‥」

「“同意”と聞くとYESかNOの2択しかないように聞こえるけど、実際はいろんな選択肢がある。ミルクも砂糖もたっぷりというこってりな気分の日もあれば、何もいれずあっさり飲みたいとか、ミルクを少しだけとか‥‥‥」

‥‥‥というふうに、直接、「セックス」という言葉を使わなくても、どんなセックスなのか説明しなくても、言いたいことはちゃんと伝わるという安心感。

念のため、事前に「他の人への質問は大歓迎だけど、相手の性的な経験に対してあれこれ質問するのはセクハラになる恐れがあるので気をつけて」とも声がけしていたのですが、紅茶に例えるという手段があることで、誰かの個人的な経験に踏み込みはしないけれど、変に遠慮しすぎることもなく、しっかり一歩踏み込んで聞き合うということができた気がします。

 

終了後、参加されてたMOさんが「気づいたら、手元のメモがこんなことになってました〜」と画像を送ってくださいました。

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作:MOさん

アートだ!!!

対話と思考のあしあとを、わたしはこんなふうにブログに文章で残すことが多いけれど、こういうのもありです。

実際の対話や思考だって、言葉だけでなく、相手の表情や声、間合いなどいろんなものを感じたり、頭のなかで様々なイメージを思い浮かべたりしながら話してますもんね。

こんなふうに、対話と思考の足跡が残るなって素敵だなと思いました。

 

ご参加くださったみなさん、さんかく岡山さん、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科さん、ありがとうございました。

もしまた機会があれば、今度は学生さんと一緒に企画を考えるところからというのもやってみたいです。

「孤独を生きるって?」@フリーデザイン岡山

今日は、就労移行支援施設のフリーデザイン岡山さんへ。

午前組のみなさんと哲学カフェをしてきました。

 

参加者からテーマを募ったところ、

  • 孤独を生きるって?
  • 自分を愛するって?
  • 信頼関係
  • 言葉は信用できるか?
  • よかれとおもって

が提案され、そのなかから「孤独を生きるって?」が選ばれました。

 

提案してくださった方は、あるエッセイを読んでこのテーマを思いついたそうですが、しばらくコロナの影響でオンライン参加だった利用者さんからは、「はじめは自宅だとマイペースにできていいなと思ってたけど、ずっと籠ってると、だんだんさみしくなっちゃって」という声も。

これは、コロナに振り回された今年度最後に相応しいテーマかもしれない。

 

孤独を感じるのはどんなとき?

ひとりでいたいのはどんなとき?

孤独とひとりでいることは同じ?

たくさん人がいても孤独を感じることがあるのはなぜ?

孤独は状態?感じるもの?

孤独を誰かと共有することは可能?

‥‥‥などをめぐって、みんなの経験も参照しながら考えました。

 

個人的には、「孤独を感じるには、誰かの存在が必要なんじゃないか」という洞察が興味深かったです。

たしかに、孤独を感じるのって、誰某がいなくてさみしいとか、仲間や家族といる隣の人と比較してだとか、誰かがいる状態との比較が生じたときかもしれない。

 

そういえば、一昨日、高島公民館のテーマ会議でも「孤独」が候補にでてて、「ずっと気になってるテーマだけど、いまじゃないとってタイミングがないんだよね〜」なんて話してたんです。

高島公民館のみなさん、わたしだけお先に愉しんじゃってすみません。

でも、おもしろかったので、やっぱりいつか高島公民館でもやりたいな。

 

 

おまけ

今回のテーマを提案してくださった方が読んだというエッセイは、こちら。

孤独を生きる言葉

孤独を生きる言葉

 

 

『中学道徳ラクイチ授業プラン』(学事出版)

『中学道徳ラクイチ授業プラン』をご恵贈いただきました。

毎日小学生新聞の連載「哲学カフェ」の仲間、神戸和佳子さん、土屋陽介さんが執筆代表者です。

 

中学道徳ラクイチ授業プラン

中学道徳ラクイチ授業プラン

  • 発売日: 2021/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

ふだんは「ご恵贈いただきました」ということを公の場であまり言わないようにしているのですが、この本については正直に「ご恵贈いただきました」と言わざるをえない。

わたしは中学道徳を担当する機会がないので、何も知らずに本屋さんでこの表紙をみて手に取ったかというと、正直微妙。

「自分には関係なさそう」と通り過ぎてしまうかも。

 

しかし、そんなわたしが、届いた本を開いた瞬間「これは、使える!」と思いました。

「誰が決めたルール?」「教科書教材で哲学対話」など計50の授業プランが掲載されているのですが、その全てにワークシートがついてるんです。

全てにっていうのが、すごいなぁ。

 

参加者自身が「参加しよう」と思って自発的に参加しているわけじゃない。

そんな学校の教室のなかで、これらのワークシートは補助線的な役割を果たし、主体的な思考や対話の呼び水的となってくれるのではと思います。

 

あと、この本に載ってる以外に、自分でなにか新しく企画したりワークシートをつくるときも、参考になりそう。

いまちょうど、一般向けに地産地消関連の対話を企画していて、ワークシート的なものがあったほうがいいかなぁどうかなぁ、と考えてたところだったので、いいタイミングでこの本に出会えました。

 

というわけで、中学道徳を担当する学校の先生方はもちろん、それ以外の方も、なにか主体的な思考や対話を促す補助線や呼び水的なものがないかな〜と探してる方には、おすすめです。

 

50の授業プラン以外にも、「授業はどうやって進めればいい?」「道徳科の「評価」って?」といったコラムに、「こんなときどうする? Q&A」や「おすすめ教材リスト」といった巻末資料もついてます。

気になる方は、出版社のサイトもチェックしてみるといいかも。

サンプルページを見たい方は、amazonの商品ページへどうぞ。