てつがくやさんの気まぐれ日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする〈てつがくやさん〉、松川えりのブログです。

「好きなことを仕事にできる?」@フリーデザイン岡山

先週は、就労移行支援施設のフリーデザイン岡山へ。

哲学カフェをしてきました。

通常はどなたでも参加可能なんですが、いまはまだウィルスの影響を考慮して、施設利用者のみのご参加となっております。

わたしも、手洗いをして、体温測ってからの参加。

 

テーマは当日募りましょう、ということで、以下2つが提案されました。

  • 好きなことを仕事にできる?
  • 男女間に友情は成立するか?

 

多数決で、今回は前者に決定。

テーマを提案された方は、好きなこと=趣味を仕事にできればとお考えとのこと。

この方向から体験も交えた様々な声が集まりました。

が、なかには「趣味になりえない完全なる仕事を楽しむこともできる」方向で発言してくださった方も。

「商品を陳列する」という行為ひとつとっても、それを楽しめる人とすごく苦手な人がいることがその場にいることが明らかに。

あと、警察官や消防士など、「好きって理由ではやってほしくない職業」もあることが判明したり(使命感?)、

「趣味と得意はちがうのでは?」という指摘が出たり。

わたしも趣味を仕事にしちゃってるタイプなので、どうしても「好きを仕事に」方面の発言に共感しちゃうのですが、そのぶん一層、反対の視点からの発見が印象に残りました。

「仕事だから我慢しなきゃいけないこともある」と「苦手なことは仕事にしない」の狭間で、もうちょっと揺れそうです。

 

もうひとつのテーマ「男女間に友情は成立するか?」ももったいないので、今度、コミュニケーション・カフェかなにかで使えるといいなと思ってます。

 

 

www.freedesign2010.co.jp

オンライン授業、6回目

明石高専の哲学概論。

予定の1ヶ月遅れでオンライン授業がはじまって、今日で6回目。

 

改めて、できないことはちゃんと「できない」って伝えるの、ほんと大事。

学生さんに「課題の復習したいからオンラインフォームじゃなくファイルで提出したい」って言われてなるほどと思ったけど、100名以上の提出物を毎回ダウンロードして管理+採点するのは大変すぎる。

わたしのキャパでは難しいので、課題は各自でメモなりスクショなりしておくようにお願いしました。

それにしても、復習できるしたいだなんて、なんとうれしいことを言ってくれる学生さんや。

 

もちろん、学生さんからリクエストされたやり方がのほうがええやん!ってことも多い。

学生さんからの意見→検討する(場合によってはアンケートをとる)→どうするか判断して理由とともに伝える、を毎週のように繰り返し。

おかげでようやく「この授業はこのやり方で」というのが定まってきた。

まだ直接は会ったことのない学生さんたちだけど、

いろいろ指摘してくれるのが本当にありがたいし、

なんでもできるわけじゃないけどいいと思ったことはできる限り取り入れるよということが、少しでも伝わるといいなぁ。

 

とおもってたら、オンライン授業は来週で最終回。

7月からは教室で授業らしい。

楽しみやけど、今度は教室の機材の使い方を思い出せるかしら?

 

オンラインテツドク!フーコーとともに権力と自由について考える

先週末、6月7日(日)は、哲学者の言葉に触れ対話する〈テツドク!〉を開催しました。

 

いまのこの状況って、医療や公衆衛生などをとおして私たちを管理し生かす〈生-権力〉の概念を提示したフーコーを読むのにぴったりだよなぁ、なんて考えていたところに、カフェフィロメンバーである廣井さんより「フーコーでテツドクを!」とお誘いいただきまして。

 

手に取りやすそうなこちらから

「自由の実践としての自己への配慮」を読んでみることに。

 

フーコーの権力と自由についての考えがぎゅっとつまっていることと、

ここで紹介されている古代ギリシャの「自己への配慮」「他者への配慮」という概念が、

いま読むのにぴったりじゃないか、と思って

*1

蓋を開けたら、参加者からは新型コロナウィルスに絡めた話はそんなに出なかったんですが、紹介者としては過去最高にフーコーの権力論について説明しやすい状況であったことは間違いありません。

 

みなさんとの対話では、

フーコーの「自由」観と「自由の相互承認」説とのちがいを明らかにしたり、

タワーマンションを例にフーコーが「権力関係」と「支配状態」のあいだにあるといっている「統治性」について考えてみたり、

「自己への配慮」と「他者への配慮」について、「よかれとおもってやったことが、相手の負担になっていることがある」という問題を親子間にある権力関係を思い浮かべながら考えてみたり*2

なかなかの充実ぶり。

目指してたとおり「思ったのとちがったけど思ったより楽しい」時間となりました。

 

特にわたしはフーコー愛が強すぎてフーコーを別の視点から読むのが難しいので*3、こういう機会があるのは本当にありがたいです。

みなさんと読むと、「その反論は思いつかんかった!」「たしかにタワーマンションって統治性について考えるのにぴったりやん!」などなど、刺激がたくさん。

 

さらに、みなさんとの対話から、新たな企画の種も‥‥‥。

そのうち実現でいるといいな♪

 

終了後も、感想を語り合ったり、みなさんの関心にぴったりなフーコー本を紹介したり*4、1時間ほどおしゃべりを楽しみました。

 

企画してくださった廣井さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

フーコーを読みたいときは、ぜひまた声をおかけくださーい♪

 

cafephilo.jp

 

*1:権力論で有名な『監獄の誕生』は気軽に手に取りにくい代物だし、『性の歴史I 知への意志』も今回のリクエストとは、ちょっとちがうかなと。

*2:終了後、そうやって気にかけること自体が、まさに他者への配慮を含有する自己への配慮ではないかと思ったり

*3:研究者としては致命的な欠点なので、今後は「フーコー研究者」ではなく「フーコー愛読者」と名乗ることにしました。

*4:自宅からオンラインだと、本棚からさっと取り出してご紹介できるのがいいですね。