まつかわえりのてつがく日誌

はなして、きいて、かんがえるをお手伝いする哲学者、松川絵里のブログです。

ミルトーク「How to work better(より良く働くために)」

11月の対話レポート、これでようやく最後です。

11月23日(木)、勤労感謝の日に、岡山大学まちなかキャンパス・城下ステーションにて、ミルトークを開催しました。

 

ミルトークとは、いわばアート哲学カフェ。

テーマの代わりに、アート作品について感じたこと考えたことを話し合います。

ちなみに、「ミル」には、「観る」とフランス語の「mille(千の)」がかけられています。

 

今回取り上げた作品は、シンフォニービルのすぐ近く、「How to work better(より良く働くために)」。

昨年開催された岡山芸術交流2016のために制作され、いまも残っている数少ない作品のうちの一つです。

そして、岡山芸術交流の複数の作品を観て回るミルトークで、賛否両論、意見が分かれた作品です。

意見が分かれたほうが面白いので、これが残ってくれてラッキーでした。

 

本来、作品を直接観て話すのが理想的なんですが、今回は外にある作品だったので「できれば会場に来る途中で観てきて〜」と参加者に声をかけたうえで、作品とその周辺の写真と、作品のなかの言葉を翻訳した資料を見ながらの話すことにしました。

(より正確にいうと、「ミルトークをしたい」というご要望にお応えするため、施設の協力を得なくてもできるこの作品を選び、この方式を編み出しました。)

 

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出典:岡山芸術交流 OKAYAMA ART SUMMIT 2016

 

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出典:岡山芸術交流 OKAYAMA ART SUMMIT 2016

 

前半は、主に3つの方向から感想や意見が飛び出す展開。

  • 作品のデザインについて(文字の感覚や文字がガタガタしていることの意味、色あいから受ける印象)
  • 作品の言語について(なぜ英語? もし日本語、あるいは意味が全くわからない言語でかかれていたら受ける印象はちがう?)
  • 作品の場所について(学校でも有効?職場にこうしたことがかかれた掲示があったら?壁に直接かかれているけど紙だったら?)
  • 「アート作品」としての意味(書かれている内容を真に受けていいの?、皮肉が込められているのでは?)

「毎日、通勤中にみているけど、初めて意味を知った」、「おしゃれなビルができたんだと思って通り過ぎてた」などなど、

勤労感謝の日だし、もう少し「働く」ということ、書かれた文章の意味に注目する発言が多くでるのではと予想していましたが、それよりも作品の存在そのもの、作品がどのようにかかれたか、どこにあって、どういう印象を与えるかに触れる発言が多くでました。

これは、うれしい予想外。

こういうところが、通常の哲学カフェにはない楽しさです。

 

後半は、前半の論点も掘り返しつつ、こうした言葉が公にさらされること(よい言葉だと思うけど他人の手帳をみたような違和感、見たくない人にも見えてしまう)という論点から、次第に、アートと公共性に関わる問題が浮かび上がってきました。

 

「自分が払った税金で、この作品を自分の街にと思う?」
「税金を使ってやるのなら、どんな作品がこの街にふさわしいか公共の場で話し合うべきでは?」
「でも、みんながよいと思う作品なんてある?あったとしても、無難で新鮮味のない作品になってしまいそう」

「好き嫌いが分かれるアート作品やアート活動を、公共のお金で担う意義は?」
「事前に作品を選べなくても、こうして作品について語り合う機会があれば、意義はあると思う」

 

と、最後は、この作品がこの街にくる契機となった岡山芸術交流や、ミルトークという営みそのものの意義について考える時間となりました。

「アート作品を前に、みんな何をみて何を感じているのだろう?」という個人的な好奇心から企画したミルトークの、公共的な意味が見つかって、なんだかラッキーな回でした。

ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。

 

岡山芸術交流は、3年毎に開催される予定で、すでに2年後の開催に向けて動きだしているようです。

はてさて、どうなるでしょう?

「せっかくの『芸術交流』なんだから、もっとこういう交流したい!』という声を、企画に関わっている人にどうにかして届けたいと思っている今日この頃です。